アジアで最も男女格差が少ないと言われているフィリピン。2017年に発表された世界ジェンダーギャップ指数では144カ国中アジアトップの10位にランクインしました。
アジアで男女平等な国No.1!
毎年世界経済フォーラム(WEF)が発表している「世界男女格差報告書」。国際労働機関(ILO)や国連開発計画(UNDP)、世界保健機関(WHO)などの統計に基づき4つの分野から算出されるジェンダーギャップ指数のランキングにおいて、2017年フィリピンは144カ国中10位にランクインしました。
これはアジアの中でダントツ1位です(ちなみに日本は114位)。
評価対象分野のひとつが経済活動参加の機会(男女間の給与や雇用数、管理職での雇用数の差)なのですが、フィリピンでは驚くべきことに女性の方が男性よりも平均賃金や所得が高いというデータが発表されています。また日本でよく問題視される女性管理職率ですが、ILOの2012年の発表(Women’s percentage share of all managers)でフィリピンは約47%で約10%の日本を大幅に上回っています。
その他、教育や健康・寿命の分野においても男女間の差はあまりなく、政治への関与の分野においては歴代女性大統領が2人いることや、女性国会議員が3割(2017年発表の女性国会議員割合ランキングで世界193カ国中49位)ほどいることなどが、統計として高い評価を得ている要素となっています。
ではなぜ、この国では女性の活躍が目立つのでしょうか?
女性が強い文化?
理由の1つは、簡単に言ってしまうと文化的フィリピン人男性の性格です。東南アジアの男性は勤勉に働かないと言われがちですが、フィリピンにも当てはまると言えるでしょう。
もちろん、きちんと働いている人もいるので一概には言えませんが、労働者階級において就職率が低かったり、ギャンブル好きが多かったりと家庭を支えるには少し頼りない一面が見受けられます。
それもあってフィリピンの女性たちの一家を支えるためにも自らが働いて生計を立てなければという気持ちが強いことが、女性の労働や社会進出を促しているともみれます。
家事や子育てによる支障が少ない?
もう1つの理由は、家事や子育てが仕事をする上での支障にならないことです。日本ではこれが原因で女性の社会進出が阻まれているとよく言われていますが、フィリピン人女性たちにはこのような概念がありません。というのも、富裕層に限らず、中流階級でも家政婦やベビーシッターを雇っている家庭が多く、女性が家のことをするという意識が日本よりも薄いのです。そのため女性が仕事に取り組みやすい、仕事ができる時間を制限されない環境ができていると言えます。
本当に男女平等・・・?
以上の理由がデータとしての男女平等に結びついていると考えられますが、本当にこれは平等なのでしょうか。
データだけ見ていると女性活躍しやすい環境であることが推測できますが、女性が働かなければならない状況で仕事をしていることも含まれるとしたら、データの数値だけでは平等と言い切れないのではないでしょうか。
また、男女間だけではなく女性たちの間での格差も指摘できます。
仕事をしているフィリピン女性たちの約30%が自営業と言われています(ILO Database)。人口に対して雇用数が少ないこの国ならではの特徴かもしれません。企業に就職し安定した給料をもらえるのとは違い、自営業では収入が必ずしも安定するとは言えません。平均賃金や所得にしても、あくまで平均値であるのでその間にはおおきな格差もあります。
また、家政婦やベビーシッターとして仕事をするのは地域差もありますが主に貧困層の女性であり、彼女たちの多くは最低賃金も得ていないとも言われています。女性の社会進出が進む裏でこれらの人々が増えている事実も見逃せません。
実際に近年女性の活躍、成功が著しく見られているフィリピン。ですがそれだけが事実ではありません。データだけでは見えてこない人々の現状を知る必要があります。