病気になったら病院で治療が受けられるのが当たり前と思っていませんか?フィリピンでは病気でも病院で適切な治療を受けられない人々がたくさんいます。
問題だらけの医療制度
以前DAREDEMO HEROでは小児がんのジェームス君に対し、特別医療支援を行っていました。大規模火災後の支援に入った地で、日本ではありえない症状のまま医療を受けられずに苦しむ小さな男の子に出会い、この国の医療の問題を痛感しました。
初期治療が遅れたことも起因し、残念ながらジェームス君は治療の途中で短い生涯を終えました。しかし、ここフィリピンには彼のように適切な治療を受けられず、亡くなっていく小さな命がたくさんあります。
全ての人々を救うことはできないけれど、私たちに救える命があるのなら救いたい!
そんな思いで、現在ゴミ山に住むトッペ君の支援を行っています。トッペ君も本来であれば治療が必要な状態でしたが、金銭的な理由で病院には行けず苦しんでいました。
ジェームス君とトッペ君の付き添いを重ねていく中で、日本とフィリピンの医療制度の違い、そしてフィリピンの医療制度の問題が次々に見えてきました。
お金だけではない、知識と意識の貧困
お金があれば私立の立派な病院で最先端の医療が受けられる。お金がなければ病院にも行けず、治療も受けられず命を落とす。
簡単に言ってしまえば、現在のフィリピンの利用制度は上記のとおりです。しかし、今回トッペ君の付き添いを重ねていく中で、貧困層に足りないのはお金だけではなく、知識と意識であることを強く感じました。
日本でも同じですが、病院では様々な手続きが必要になります。同意書へのサイン、無保険の患者に対する助成金の申請書類の作成、さらには医師、看護師からの専門用語による説明。教育を受けていない貧困層の親にとっては、想像以上の負担です。さらに、貧困層の多くは子どもが多く、一人の病気の子どもにかけられる時間にも限りがあります。
トッペ君の付き添いをしていても、例えばMRIを撮るという一つの検査のために、丸3日間かかりました。フィリピンの公立病院には、MRIのような最新検査器具がないため、私立の病院に出向かなければいけません。しかし、段取り・効率の非常に悪いこの国では、病院でのたらいまわしが当たり前です。公立病院、私立病院を何度も往復し、さらに病院の中をあっちに行って、こっちに行って・・・3日後にやっとMRIが撮れた時には、トッペ君も母親も私たちもぐったり疲れてしまいました。
これでも、病院に慣れたDAREDEMO HEROのスタッフが何度も病院側に確認と質問と、催促を繰り返してできたことです。ただ待っているだけでは、もっと時間がかかります。貧困層であればあるほど、医者は絶対的な尊敬の対象であり、確認や催促、自己主張はできません。その結果、公立の病院にはたくさんの患者や家族が待合室で数日を過ごすことになります。
手術への道
今回、様々な手続きと検査を経て、やっとトッペ君が手術に向けて病院に入院することができました。最終的な検査を行い、数日後には頭部と顔の水を抜く手術を行います。小さな身体でたくさんの検査を頑張ったトッペ君。最後の手術を乗り越え、夢だったバスケットボールを思いっきりできるようになることを祈っています。