高級リゾート地として有名なセブにもゴミ山があることはご存知ですか?セブにあるゴミ山の今をお伝えします。
イナワヤン地区(INYAWAN)について
イナワヤン地区はセブ市郊外の高級ショッピングモール「SMシーサイド」をさらに進んだ場所に位置し、そこにセブでも有数のゴミ山があります。
セブ島を訪れる多くの日本人は、セブの美しい海、リゾートホテル、ショッピングモールなどセブの表の面しか見ることができません。
DAREDEMO HEROでは通常の観光では見ることのできない「セブの現状」をお伝えするために、このゴミ山を訪問することがあります。
なぜフィリピンにはゴミ山があるのか?
フィリピンでは、大気汚染防止法という法律に基づき、有害ガスを排出する都市ゴミ、医療廃棄物、有害廃棄物の焼却炉を禁止されています。この法律は、ごみの焼却自体を禁止するものではなく、処理過程において有毒・有害物を発生するものを禁止するものですが、実質的に予算・技術面でそれらをクリアする焼却施設が建設されることなく、現在は各地でゴミを積み上げるだけの処置がとられています。
イナヤワンのゴミ山は、JICAの支援により1995年「イナヤワン衛生埋立場」としてスタートしました。当初の耐久許容年数は7年とされていましたが、計画は大きくずれ約20年間にもわたり、このゴミ山がセブ市唯一の廃棄物最終処分場として使われ、当初の計画の2倍以上である200万立方メートルが埋立てられたため、2011年に一時閉鎖されました。
しかし、新たな処理場の建設もうまく進まず、さらに市長の交代などもあり、再開と閉鎖を繰り返し2016年12月に完全閉鎖されました。
イナヤワン閉鎖後のゴミの行方
イナヤワンのゴミ山が閉鎖され、毎日セブ市で排出される600トン以上ゴミはどこに運ばれているのでしょうか?
実は現在もそれらのゴミは、イナヤワンに運ばれています。しかし、以前のようにゴミ山に積み上げていくのではなく、一時保管所として作られた場所にいったん集められ、Consolacionという別の市の山岳地区に運ばれています。要は場所が変わっただけで、根本的な解決はなされていないのです。
さらに現在、環境に悪影響をもたらし、その結果近隣住民の安全や健康に危険が及ぶとして、セブ市に対してイナヤワン埋立処分場の修復が命じられています。しかし、具体的な対策は現時点で行われていません。
イナワヤンで暮らす人々
悪臭が漂い、ゴミで溢れたゴミ山周辺には大きな集落があり、現在もたくさんの人が暮らしています。
ここに暮らす人々の中には、閉鎖前のゴミ山でゴミを拾って生計を立てていただ人(ウエストピッカー・ススカベンジャー)もいます。彼らはゴミ山の閉鎖に伴い職を失い、現在も新たな仕事につくことのできない人もたくさんいます。
子どもたちの中にも、貧困がゆえに学校に行けない子どもたちもたくさんいます。仮に政府の支援で小学校を卒業したところで、正規の職に就くことはできません。そのため、教育に理解のない親は、学校に行くよりも家の手伝いをさせようとします。
それ以外にも、アルコールや薬物の蔓延など、この地には様々な問題が残されています。
最後に…
ゴミ集積場が完全に封鎖され、イナワヤンの置かれた状況は大きく変わりました。しかし、それは良い意味での変化だけではなく、たくさんの課題も残しています。
支援・ボランティアの第一歩は知ることです。当団体では、日本人のみなさまにこの場所を訪れていただき、現状を自分の目で知ることで、「貧困とは何なのか」を理解していただきたいと思っております。「自分たちにできること」「人々が何を必要としているのか」を考えていただき、支援への第一歩を踏み出していただきたいと思っています。